「夫が、餅つきをしたいと言い出し、本気の杵と臼を買って来ました。」
という話はテレビで何度かさせていただきましたが、買って来たので勿論それに伴い、「餅つき大会」開催の運びとなりました。
去年は、息子が中学受験生だったにも関わらず、初開催ということも相まって、諸事情ありで年末年始と2回開催する事にしました。
まず、この「杵と臼」について、説明させていただきます。
「餅つきを家でしたいから、杵と臼を買いたい。」
「えー?!そんなん家で出来るん?」
「うちの実家は僕が子供の頃は毎年やってたから大丈夫!」
「いやいやいやいや、それは手伝ってくれる人が、いっぱい居たからやん。」
夫の母は教職員時代に推薦され、西宮市の市会議員を長年務めて、女性初の市議会議長になり、晩年には旭日章まで受賞したなんとも立派なお方なのです。
「僕かって、手伝ってくれる劇団員はおる。」
「いや、そうやけど・・・。」
「めっちゃいい臼をつくってくれるところがあるらしいで。」
「え?!つくる???売ってる物を買うんじゃなくて?」
「そうそう!でもなー、埼玉の奥の方でちょっと遠いねんなー。」
「ふーん。」
もう本気にしていない私。
こんな会話をしたのが、3年程前でしょうか。
そのうち、熱も覚めるやろうと、スルーしていたら、ある日・・・
「頼んできた!」
「何を?」
「杵と臼。」
「えーーーーー!」
「たまたま、今日のロケ地から近かったから。」
出た!すごい強運の持ち主。
「木を選んできたから、それをくり抜いて、つくってもらうねん。半年くらいかかるらしい。」
えらいたいそうな事で・・・。
代金は怖くて聞けなかった私。
検討もつかないですが、その手間隙を考えたら、相当な事になっているかと。
「なんで手作り?」
「Amazonには売ってへんの?」
「そんなデカいやつ頼んだん?」
と私が矢継ぎ早に質問しても、
「まあええやん。楽しみやなぁ。」
と、無邪気な50代後半の夫。
そんな会話をしていた事も忘れた頃、
「明日、届くから。」と夫。
「何が?」
「杵と臼。」
やっぱり夢じゃなかったのね。
そして、やってきました、軽トラが。
業者の方々が3人。
臼がとにかく重くて、100kgぐらいあります。
夫も手伝い、大人4人がかりで必死で運びます。
しかもうちは保存場所が地下のため、階段を使わなくてはなりません。
なんとか地下に降ろしてとりあえず記念撮影。
その「杵と臼屋さん」が言うには、
「相撲部屋と同じサイズです。くりぬき方は関西風の丸い感じにしておきました。」
という事でした。
確かに、デカい!!
息子の幼稚園時代のお餅つき大会で使ってたサイズ。
うち、3人家族なんですけど・・・。
「クールポコ」サイズでええやん。
しかもなんで杵が4本?!
基本餅つきって、つき手と返し手の2人ですよね。
夫曰く、
「スペアや。」
・・・いらんやろー!
テニスラケットやないねんから!
そんなに壊れるもんとちゃうやろし。
大人用と子供用があるんはわかりますが、1本ずつでじゅうぶん!
と、このような経緯でうちに来た巨大な杵と臼。
しかし、実際にお餅をつくとなると、これだけでは出来ません。
まず、餅米を洗って半日くらい浸水させなければならず(餅米は普通のお米よりも固くて浸水しにくいのです)、そのための巨大ザルや巨大ボウルが必要です。
さらに、それを蒸すために巨大蒸し鍋、巨大コンロ、巨大さらし、巨大しゃもじなども必要になって来ます。
これらは家にある物でも代用出来るかと思いきや、そうはいきません。
なぜなら、臼が巨大だからそれに合わせると全部巨大サイズでないと対応出来ないのです!!
餅米も20kg買う予定という夫。
思いついたら止まらない彼はいつの間にか合羽橋道具街まで出掛け、ある商店に「餅つき大会をするので、一式道具を揃えたい」とお願いし、巨大キッチングッズを山ほど車に載せて帰って来たのです。
1年に1回か2回しか使わない物に対してこの浪費。
そして、いったいどこに置くん!?となります。
とりあえず、一部屋にまとめてみたら、その部屋が「餅つき倉庫」になってしまったため、こらあかん(これではダメだ)!と地下へ移動。
一応地下に物置き部屋はあり、そこに仲間の杵と臼は居るのですが、そこに入れてしまうともうその部屋がぎゅうぎゅうに。
杵と臼が届いた時も、業者さんに、
「保管場所はどこですか?」と聞かれ、
「え?あ、考えてなかった。」という調子の夫ですので、買って満足。
後始末はいつも私。
あ、すみません、愚痴ってしまいました。
とりあえずそこまでいきましたが、その年の冬は、
「いつ餅つきする?」と夫に聞かれても
「いやー、あなたも息子も忙しいからねー。」
とのらりくらり、かわして1年目は回避成功。
夫も「うちはいつでも餅つき大会が出来るんだ」という安心感に満足したのか、そこまで強くは言って来ませんでした。
が、翌年、いよいよ息子の中学受験が目前に迫って来た最中、とうとう痺れを切らした夫が、
「餅つき大会しまーす!」
と知り合いの俳優さん達に宣伝し始め、後に引けなくなって来ました。
私は不安がいっぱい。
そもそも素人集団で相撲部屋規模の餅つき大会なんて、開催可能なんだろうか。
調べたら、「餅つきイベント業者」というものが存在するらしく、取り敢えず初回はそこにお願いしてプロに来てもらったほうが良いのではないだろうか。
っていうか、この業者、「道具一式お持ちして、後片付けまでして帰ります」ってなってるから、そもそもこれでよかったんちゃうん!?
などなど色んな思いを夫にぶつけても、
「大丈夫大丈夫!自分らで全部やるから楽しいんやん。」
と相変わらずの楽天家。
でもいきなりお忙しい芸能人の方々をお呼び立てして、失敗したらどないすんの?!
とますます不安が募る私。
「一旦、練習しよう」と、もしまごついたり失敗しても許される気の置けない仲間達を呼び、1からやってみる事に。
見事、トラブル多発!
まず前日夜の米研ぎが、めちゃくちゃ大変!水が冷たいし、米が重いし大量。
なんで練習やのに20kgも買ってきてんの!?
米1kgは6.7合なので、20kgは134合にもなります。それを浸けておく訳ですから、15合から20合ずつ洗っても巨大ボウルが6、7個は必要です。
もちろんないので、家中のあらゆるサイズのボウルやら代用出来そうなバケツやらも総動員。
地下室が洗米だらけ。
幼稚園の餅つき大会前日はこんな感じだったのかなぁと、改めて、当時の先生方に感謝。
地下の外付けのガス栓に買ってきた巨大ガスコンロを繋ごうとするとホースとガス栓の口の大きさが合わず、劇団員がホームセンターに買いに走ります。
どうやってお米を蒸すの?
2段式になってるけど、上下で蒸時間に違いは出来るのかなあ?
蒸してすぐにつき始めないとダメなんじゃない?
つく時間はどのくらい?
返し手のお水の量は?
つき終わったら取り敢えず何に入れるの?
くっつかないためのもち粉ってどのくらいが適当なんだろうか?
などなど・・・。
誰も正解を知らないやる気だけで集まったおじさんおばさんとその子供達・・・。
結局、頼ったのは「You Tube」。
いつも子供に見過ぎを注意している大人達がiPadにかぶり付きで映像を見ながら恐る恐る作業を進めます。
「You Tube」って便利ですね〜。
なんとか出来上がったつきたてのお餅。
それはそれは、美味しかったです。
市販のものとは伸びも違うし、お餅自体にほんのり甘いような「味」があります。
あんこを挟んで、ほかほかの大福餅にしてみたり、大根おろしにお醤油を垂らしてお餅を小さめに丸めて入れたのも美味しかったです。
良かったー、練習しておいて。
あ、その日来てくれた人達には申し訳なかったですが、みんな様々なトラブルも楽しんでいる様子でした。
本当にありがとうございました。
大人になるに連れ、「初めてのこと」が減っていくので、なかなか貴重な面白い経験になりました。
数日後、年が明けてから、芸能人の方々をお迎えして(総勢30名くらい)、第2回目を開催した際は、勝手がわかっていたので作業も順調に進められ、変な待ち時間もなく、私もお歳暮に沢山いただいていた鳴門金時でスイートポテトを大量に作ったり、関西風白味噌のお雑煮やお汁粉を大量に振る舞う余裕が出来ました。
巨大と、大量がキーワードですね。
今年は3回目、余裕がありすぎて、夫は餅をついてる横でバーベキューまで始めてしまいました。
ほんま、次から次へと色々よう思いつきはるわー。
飽きなくて、楽しいけど、周りは大変!
毎回サポートしてくれている劇団員の皆様や私を手伝ってくれている友人達には感謝感謝でございます。
今年は5度目の年男(還暦?!)と4度目の年女の私達ですが、
まだまだ好奇心旺盛の夫と、心配性の妻です。
夫がまた色んなことを思い付き、周りを巻き込んでしまうかも知れませんが、どうぞよろしくお願いします。(誰に言ってんの?!)
でもお陰様で、今は夫がなんかとんでもないことを言い出したら、このエッセイの「ネタ」になるという、密かな楽しみが生まれました。
読者の皆様、ありがとうございます。
初仕事のメイクルームにて若返りアプリで撮りました。すみません