非認知能力のススメ(中学受験における「母親力」の使い方)(旧cakes連載記事)

そろそろ受験シーズンですね。
今年度は大学入試に色々重要な変更があり、ニュースでも連日報道されていました。

うちは一人息子で中学受験を経験しました。
この事について、1度は書かせて頂こうと思っていました。
なぜならこの連載を始めるきっかけになったのが、息子の中学受験だからです。

どういうことかというと、私が塾からの依頼で書いた受験後母親体験記(匿名)が、巡り巡って出版関係者の目に留まり、こちらのサイトをご紹介頂いたのです。

という流れだったので最初は中学受験に関する内容で書こうかというお話もありましたが、そうなると現在中学生の息子の事をたくさん書かなければならず、彼のプライバシーを考えると、まだ早いかなと思い、まずは自分に起こった出来事や、今思う事、などを中心に書き始めました。

でも、いつかは書きたいと思っていたところ、先日夫があるクイズ番組で、

「僕の息子は中学受験をしましたので、僕も一緒に勉強したから自信あります!」

と、意気揚々と語っていて、(わー、テレビでは言わんといてって言ってたのに、思いっきり言ってるやん!)となり、これはもう私も解禁かなと、今回書かせて頂きます。

うちはお父さんが役者、お母さんがモデル、
というちょっとレアな環境かも知れませんが、息子には出来るだけその影響が及ばないように育ててきたつもりです。

幼稚園は近さと園庭が広い事で選び、小学校は地元の区立小学校へ通わせました。

小学校へ上がる際には、

「芸能人の子供だから、きっとお受験するに違いない。」

と、噂されていたようですが、小学校受験は親の面接が必須のため、夫に相談すると、

「え?俺?その面接の日に仕事休めるかわからんで。」

とあっさり言われました。

「えー、夏のバーベキューのためには早々とNG申請してくれんのに、なんで休み取ってくれへんの?」

「いやー、バーベキューは俺がおらなあかんけど、受験は母親だけでもええやろ?両親揃ってなあかんとかおかしいやろ。」

そらそうやけど・・・。

やっぱ、この人変わってると再確認し、自分もそこまでの意欲が湧かず、男の子やし、地元の友達もいたほうがええか、色んな子と出会うのも勉強になるやろし、と割とあっさり「やめ」にしました。

あくまで私のリサーチですが、女性が「その時代時代の友人」をつくるのに対し、男性は「幼なじみ」やら「地元の友達」を一生大切にする傾向にあるように思うのです。

小学校から私立やインターナショナルスクールに通うと、電車通学の子が多いため、放課後近くの公園や誰かの家で遊んだりがなかなか出来ないというのを聞きました。

で、徒歩10分の地元小学校へ。
そして、6年間一緒に登校する事になったご近所さん、お休みの日には近くの広場でサッカーをしたり、うちで一緒にゲームをするお友達も出来ました。

私も息子が所属していたサッカーチームではお当番をこなし、時には試合を引率し、学校の委員も2つ(行事委員・クラス委員)やりました。

息子は習い事を沢山していました(させていました)。
テニス、美術、英会話、+強豪サッカーチーム所属(幼稚園のサッカークラブのお友達が沢山いたので入ったらめっちゃ強かっただけ)のため、とても忙しい日々でした。

が、中学校は受験率が高い地域という事と、ある有名女優さんの息子さんが、

「中学に入ったらいきなり、お前、芸能人の子供だから金持ちだろ、1000円持って来い、と言われた。」

とテレビで話されていたのを見たりして、これは受験かしら・・・となんとなく思っていたところ、3年生の3学期の初めくらいに、ママ友さんから、「塾の説明会」のお誘いを受け、まだ早いような気もしつつ、大手塾の入塾説明会へ行きました。

何やら中学受験は本番が2月1日から始まるらしく、遡って3年間勉強しようと思ったら3年生の2月がスタート時期らしいのです。

まず、驚いたのが、その塾では3時間ぶっ通しで授業をするらしく、
休憩なし、お手洗いの時のみ手を挙げて退室するという授業形式。
無理やろ、大人でもそんなにずっと集中できひんし・・・。

次に個別相談の時間。

「その子に合った志望校選びをして頂けますか?」という私の質問に対し、

「そうです。お母さん、学校によって問題の傾向というのがありますので、うちではその子の得意な問題形式の学校を的確に選びます。」

いや、そういう事じゃなくて・・・。

私が聞きたかったのは、子供の性格に合っていて、好きな事、やりたい事を伸ばせる学校の情報を教えて頂けますか?という事だったのですが、塾からの解答は、その子の実力(学力の)、得意不得意を見極め、より偏差値の高い学校に受かるように指導します、でした。

明らかに、考え方が違う・・・ムリ・・・。

そもそも、小学生が3年間も受験勉強を継続すること自体が厳しいし、
受験業界の策略ではないかと疑っていた私は、とりあえず、4年生になってから国語と算数だけ(受験は4科目)塾へ行かせようかと考えましたが、どの塾を選べば良いかがとっても難しく、悩みました。

自宅のある駅だけでも2桁に届きそうなくらい塾が乱立しているし、少し先の大きな駅に行くとなるとまた選択肢が広がります。

自分も大阪で中学受験を経験していたけど、
自宅から徒歩で行ける個人経営の小さな塾に5年生から2科目通っただけでした。

時代も場所も違うけど、志望校選びの前にこんな難関があったとは・・・。

色んな塾の説明会やら体験会に、時には息子を連れて行きましたが、本人はまだ遊びたい盛りの小学3年生。

まず、勉強時間が増える事に拒否反応、更に、集団塾の体験をした際にはふざけている子がいて気になったとか、問題が難し過ぎるなどと言って、家庭教師など個別指導の方がいいと言います。

確かに、私も勉強は個人的なものだし、個別の方が力もつく気はするけど、やはり塾には行かないと情報が少ない気がする・・・。

集団塾の講義は5%の学習定着率に対し、個別で本人に説明させると、90%になるとも取れます。

と、結構長い時間逡巡した結果、5年生から個別で1教科、残り3教科は家庭教師で、というスタイルになりました。

家庭教師、というと「料金が高い」イメージになると思いますが、そこは大阪出身の私、自分の人脈と行動力を駆使して、「知り合い」に「お安く」お願いすることが出来ました。

夫もお仕事頑張ってくれているし、「ないわけではないでしょ!」とのご指摘もあるかも知れませんが、
私が中学受験をする事において、大切にしていたことがいくつかあり、その一つが「お金を沢山使えば良いというものではない。」という事でした。

「生き金」と「死に金」の理論がありますが、受験に大枚をはたいて、それが全て「生きる」かというと、うちの場合はきっとそうはならないだろうと思いました。

せめて親が「これだけやらせたのだから後悔はない」などの安心感が得られるのであれば良かったのかも知れませんが、
「勉強合宿?!高っ!絶対一日中勉強しても頭に入ってないって!そんなお金を使うなら家族旅行でリフレッシュさせた方が意欲が湧くと思う。私が行きたいからちゃうで。家族のためやで。」などど言ってる時点でもうそれは「死に金」決定です。

何度も言いますが、うちの場合はです。
息子は結局、個別指導のみのため、時間の都合もつけやすく、6年生まで勉強以外の習い事(テニス・美術)も続けていました(英会話は4年生まで)。

5年生の時に描いた美術の作品

ただ、土日メインのサッカーチームは本人が1年間の休部を選びました。

これは実は私は続けて欲しかったのですが、何せ勉強に加えて、美術、テニスも週1であり、本人が体力的に疲れてきていたのと、土日は模試や学校見学で試合を欠席する事も増えて来て、都大会常連で、6年生になったらどのクラブチームのトレーニング選抜試験を受けるか悩む子が沢山所属しているようなチームの中で、サッカーへの情熱に対する温度差を感じていたのかも知れません。

早々に塾以外の習い事を整理するご家庭も多いなか、私がなぜサッカーもやめて欲しくなかったかというと、「人間力」を養うのに、素晴らしいチームだったからです。

コーチはパパコーチがボランティアで行い、ママたちの協力がなければ成り立たないという環境のなか、それこそお金が沢山あるクラブチームの下部組織が多く出場する大会で勝ち上がるというのは、チームワークがなければ絶対に無理な事です。

コーチや会長さん、ママさん達には感謝しかありませんでした。

そう、私は自分の来し方も含め、「生きる力」の重要性を信じています。
それは受験生であっても大切にしなくてはならない事だと思うのです。

勉強以外の経験から学ぶ事が、本人の未来にどれだけ多く役立つかを知っています(自分が進学校で勉強ばかりしてきて、いざ社会に出た時、本当に大変だったからです)。

この事は教育経済学者である中室真希子先生の、「「学力」の経済学」という本の中でエビデンス(科学的根拠)が記されています。

『「学力」の経済学』中室牧子/著  ディスカヴァー トウェンティワン

一部紹介すると、「非認知能力は将来の年収、学歴や就業形態などの労働市場における成果に大きく影響する事が明らかになってきている」というものです。

「非認知能力とはIQや学力テストで計測される認知能力とは違い、「忍耐力がある」とか、「社会性がある」とか、「意欲的である」といった人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します」と説明されています。

更に「子供の学力にもっとも大きな影響を与える要因」は「親の年収や学歴」

と文部科学省の調査に基づいたグラフが示され、断言されています。

あるテレビ番組で芸人さんが受験の相談をママ友から受けたら

「お前の子供だからなって言ってやれ!」と言っていましたが、現実のママ友社会では口が裂けても言えません。

が、私自信も納得しました。

私も夫も「勉強」は嫌いじゃないけど、「受験勉強」は本当に嫌でした。

なぜなら、学びたい事を積極的に学ぶ「勉強」と、試験に合格するための暗記中心の「勉強」は全然違うからです。

息子が受験勉強に対してなかなかやる気が出なかったのも「私の子供だからな」と思えば納得がいきます。

「宿題を減らしてやってください」と、お願いする変わった母親に対し、「やればもっと出来るはずなのに」とよく家庭教師の先生には惜しまれましたが、「やらないので」と返していました。「やらない」のも彼の実力として諦めてくださいと。

それをふまえた中で、志望校を選びました。

そんな訳でうちは6年生の夏にもバーベキュー大会や家族旅行をし、
受験直前のお正月に30人規模の餅つき大会を2回も開催し、小学校は受験生が軒並み最後の追い込みとインフルエンザをうつされないため1ヶ月か最低でも1週間前からは欠席するなか、受験日前日まで元気に通い、6年生も皆勤賞でした。(入試当日は公休扱い)

小学校卒業式

運よくギリギリ合格をいただきましたが、本当に最小限の勉強時間で切り抜けたと思います。

結果、受験直前のナーバスになる時期も、なんとか彼の長所である優しさや思いやりは失われずに、親子関係も良好なままで過ごす事ができたと自負しておりますが、遊び(息抜き)と、勉強時間の調整(スケジューリング)を最後までしていた母は、ヨガインストラクターなのにストレス性の腰痛になったり、人生初の帯状疱疹(軽め)ができたりしました。

表面上は機嫌良く過ごしていたつもりですが、やはり体に出ちゃうお年頃なのですね・・・。

そして今日、息子は期末テスト真っ最中の日曜日。お昼前まで寝て、ご飯を食べて、YouTubeを見ています・・・親の非認知能力(ここでは忍耐力)もまだまだ鍛えられ続けている日々です。