他人の何気ないひと言から、受けるダメージと影響(旧cakes連載記事)

人から受けた言葉、、、たったひと言がずっと心に残ることがあります。笑えるものから、人生を左右する事になるものまで、様々です。

それは突然襲って来ます。まさに襲撃。
予期せぬ攻撃を受けた時、人は固まってしまう場合が多いのではないでしょうか。
今回はそんなエピソードをいくつか綴ってみたいと思います。

ある友人Mさんの話。

朝の通勤ラッシュで「女性専用車両」に乗っていると、そこへチンピラ風(Mさん曰く)の男性2人組が乗って来ました。勇気あるMさん、

「ここ、女性専用車両ですよ!」と注意。シーンとする車内。暫く間を置いてから、その車両内に響き渡るくらいの大きな声で、「うるせー、ブス!」と言われたそうです。

普段は気の強い彼女ですが、あまりのことに何も言い返せず、その2人の笑い声を聞きながら、気まずい車内にそのまま乗っているしかなかったそうです。

ちなみに、彼女はブスではありません。いつもヒールを履き、美意識高い系女子ですので、「ブス」と言われたこと自体、人生初だったに違いありません。

そしていつも明るくポジティブな人なので、私には面白エピソードとして話してくれました。私も笑いながら「ブスじゃないです!とか言うのもおかしいしねー」などと言いながら、聞いていましたが、その時本人はムカついて仕方なかったことでしょう。

人は(特に女性は)チンピラ風2人組に、なかなか注意はできないので、ここまでのエピソードはそうそうないとは思いますが、似たような体験を皆さんお持ちではないでしょうか。

私にもいくつかあります。

息子がまだ生まれてから3ヶ月くらいの頃、ベビーカーに乗せて近所をお散歩していたら、お婆さんが近付いて来て

「あらまだ小さいのねー。」と声をかけてきました。

主人は忙しく、実家も遠く、孤独な育児真っ只中だった私は嬉しくなり、「そうなんですよー。」とにこやかに返しました。すると、「かわいそうに。こんな小さい子を連れ出して。昔はこのくらいだとまだ外に出さなかったわよ。」と、言われたのです。

(え?なになになになに?!)と思ったのも束の間、そのお婆さんは、言うだけ言って、どこかへ去ってしまっていました。

私は絶句し、しばらくその場に立ち尽くしてしまいました。

確実に自分は悪いことをしていないのに、こちらが予期せぬ強い言葉を浴びせられたら、固まるのは仕方ないと思います。

そこで直ぐに言い返せる人というのは、常に臨戦態勢なのではないでしょうか。それはそれで疲れそうですね。

でも、このような他人のひと言から奮起し、頑張った経験が、私にはあります。

大阪で偏差値が一番高い女子校に通っていた私(自分で言うのも何ですが)が、思うところあり、モデル業で自立しようと、東京に来て約半年が過ぎた頃でしょうか、有名私立W大に通うお姉様(友人の姉)が、一人暮らしの私が寂しかろうと、W大アメフト部の学生との合コンに誘って下さいました。

歳上の方々のなか、合コンなるものも初めてで、緊張の私。

どうやらその男子学生達は、ファンの女子もいる程の人気振りらしく、アメフトなんて全く知らない私にお姉様が「すご〜い!」とか言っとけばいいからとアドバイスをくれました。そのことにも少し違和感を覚えながら、とりあえず着席した私をお姉様が「この子は学生じゃないから」と紹介してくれました。

すると、向かいの席に座っていた男子が

「じゃあ君は何をしてるの?」と聞いて来たので

「モデルです。」と答えると、

「なんだ、プー太郎か。」と、半笑いで言ってきました。

「、、、、、、!?」

このひと言にムクムクと怒りの感情が芽生えてきた私。

お姉様の手前もあり、まさかの言葉に、それこそその時は何も言い返せなかったけど、はっきりと、(悔しい!)と思ったのは覚えています。

あなた達は、ご両親からお金を払ってもらって大学に行き、好きなスポーツをして、女子からもちやほやされているかもしれないけど、私はモデルという職業を真面目に仕事としてやっていてオーディションもたくさん受けてやっと親から仕送りしてもらわなくても東京で自活できるようになったのに、そんなあなた達にプー太郎(今で言うニート的な)呼ばわりされる筋合いはない!

特進クラスからただ一人就職したけれど、高3の夏に受けた模試でW大、合格圏内でした!

大学行っても勉強したいことがなく、親のお金で遊ぶなんてことになるなら早く自立したいと考えただけなのに!

W大と言うだけでそんなに人を見下せる程偉いのですか?!

などとずっと心の中がモヤモヤし、その合コンは連れて行ってくれたお姉様には申し訳なかったですが、最後まで若干機嫌悪目の場違いな子としてやり過ごしました。

アパートに帰って、冷静になり、改めて考えました。

私は中学受験の頃から勉強ばかりして来て、高校後半には学歴社会に疑問を呈して来たけれど、結局大学受験はしなかった。何か意見をするにはやはり自分も一度はそこに身を置かないと、聞いてもらえないのではないか。

そこから、私の仕事と受験勉強の両立生活が始まりました。当時モデル業界の中ではちょっと珍しい存在として今でも記憶してくださっているスタッフさんも何人かいらっしゃるようです。参考書を持って現場に行き、行き帰りの電車でも英単語を覚えました。

高校時代「大学に行く意味」を見失い、悩んだ私でしたが、そんな自分が大学で学びたいのは心理学(特に教育心理学)だと気付き、文学部教育学科を受験し、心理学を専攻しました。

仕事と両立しながらでしたので、サークル活動などは出来ず、4年で卒業するだけで精一杯でしたが、出会った人達から受けた影響を含め、そこで学んだ多くの事がその後の自分の人生をより豊かなものにしてくれたと感じています。

あの時あの学生にプー太郎呼ばわりされていなければ、あんなに頑張れなかったかも知れません。かと言って「今ではあの人に感謝しています。」と言える程、人間出来てはいませんが。だって本当に傷ついたもの、、、。(まだ言う!)

もう忘れちゃいたいのに、ふとした時に思い出して、うっかり記憶を上書きしてしまい、また忘れられなくなることがあります。

相手はきっと全く覚えてないだろうけど、、、それがまた腹立たしい!ダメダメ、ここで怒るとまた上書きしちゃうから〜。