「モデル」には結構すぐ「なれる」(旧cakes連載記事)

先日こっそり48歳の誕生日を迎え、モデル人生がとうとう30年になってしまいました。

始めた頃はここまで長く続けられるとは思っていなかったので、自分でも驚きの長さです。

更にすごい(?!)のが、ずーっと同じ事務所に所属していること。

大体どこかの時期に、移籍を考えたり、別の職業に転職したりする方々が多い中、大学卒業時にも就職活動はせず、結婚しても辞めず、子供が生まれても辞めず、担当マネージャーが退社したり、もっと上層部の方が新事務所を作っても動かず、ヨガのインストラクターの仕事を始めても、籍を抜かず・・・「しつこい?!」と自分に何度もツッコミは入れているのですが、そろそろ引退かしら・・・と思っていたらなんかお仕事が決まったり・・・辞め時を完全に逃している感はあります。

ありがたいことに、雑誌畑で、「CanCam」「JJ」「Ray」「CLASSY.」「美しいキモノ」「Muffin」(廃刊)「YouNew」(廃刊)「オレンジページ」(メイクページ)「VERY」「baby-mo」(息子と一緒に)「美スト」「MyAge」などなど・・・その時代時代で使っていただくことが出来、それに伴い、広告やらカタログ(通販)やらのお仕事をさせていただいてきました。

レスリー・キーさんに撮っていただいた百貨店のポスターになった写真

モデルのギャラは3ヶ月から6ヶ月遅れで入金されるので(マネージメント料を引いて)、上京して軌道に乗るまでの半年くらいは仕送りにも頼ってしまいましたが、そこからはずっと「自活」し続けています。(妊娠、出産、育児初期はさすがにお休みをいただきましたが)

そう、私は本業として、モデルをやってきたのです。

実際生活が大変な時はバイトをするモデルもおりますが、(うちの事務所は基本的にはNGなので内緒でやってたのかな)私はなんとかこれ1本で生きてきました。

今は年齢的に(それだけではないだろうが)仕事量も減り、息子も大きくなって、ヨガやスタジオレンタルなどその他の「副業」もやらせていただいていますが、「モデル業」ということにそれなりのプライドを持って真面目にやってきました。

が、「モデル」と言っても色々あり、私は身長が170cmで「雑誌」に丁度よく、「ショーモデル」には身長が足りないので、皆さんがよくイメージする「ランウェイ」のようなものは、雑誌などの企画もの以外、ほぼ経験しておりません。

そして時代的にモデルからタレントになる方々はいても(JJ時代にご一緒させていただいていた藤原紀香さんや梅宮アンナさんなど)その後もモデルを続ける感じはあまりなく、今のように「モデルで女優」とか「モデルでタレント」更にいうと「モデルで歯科衛生士」さん(武田真治さんご結婚おめでとうございます)のような感じの方はなかなかいらっしゃいませんでした。

カテゴリーが曖昧になってきたというか・・・。

そもそも「モデル」だけだと、私のように本業という意識でやっていても、余程の「売れっ子モデル」でない限り、そんなに皆さんの中で名前と顔が一致しませんよね。

私もよくオーディションでキャスティングさんや制作会社の方に、

「なんか見たことあるような気もするけど誰だっけ?」とか

「あー、なんかずっとやってる子だよね。」とか

「何をやられてる方ですか?」(和田アキ子さんの物真似のシャチホコさん風)

みたいな、映画「ラ・ラ・ランド」のオーディションシーン的な扱いを受け続けてきました。(今でも割とそう。旧姓でやっているので、記憶が夫に繋がる人はまずいません。)

そういう意味では、誰でも「私はモデル」と言ってしまえば言えるというか・・・。

最近は特に撮影もデジタル化していて、どんなに肌が荒れていても化粧品モデルが出来ると言えば出来てしまう時代なので(もちろんその前に「選ばれる」ことが前提ですが)私も特に広告などの仕事では「上がり(完成形)」が「誰?」っていうくらい美しく仕上がっている場合があり、この人と今鏡に写っている自分が同一人物だとは誰も思わないであろうと、何のカモフラージュもなく堂々と街を歩けます。

いいんだかなんだか・・・。

化粧品のポスターになった写真

なぜ私が急にこんなことを思ったかというと、先日ネイルサロンに行った時きっかけになる会話があったからです。

カーテン越しにお隣のお客さんがトラブってる感じで・・・

「あー、ここはボコっとなっちゃってるからやり直したほうがいいかもね。」

と、ベテランネイリストが新人ネイリストを指導していて、でもそのお客さんは次の予定があり、もう行かなくてはいけないらしく、何時なら戻って来れるか的な話をしているのが聞こえてきたのです。

ひと段落して、私の施術をしに来てくれたもう何年もお世話になっているベテランネイリストさんに、

「さっき大丈夫だった?」と、聞いてみると

「うーん、あのお客さん、モデルさんなんでねぇ・・・。」

「え?そうなの?それだとちゃんとしないと仕事に支障が出ちゃうんじゃない?」

「うーん、まぁそうなんですけどそれはお互い様と言うか・・・。」

「ん??そういうこだわりそうな人はベテランさんがやったほうがいいんじゃない?」

「いやー、モデルさんはそういうの、承知でお願いしてるからねー。」

「え?どういうこと?」

「ちょっと練習というかそういう意味合いもあるから、お安くしてる訳で・・・。」

「え?モデルって私と同業者ってことだよね?」

「え???・・・あー、違いますよー!ネイルモデルさんです!」

「あー・・・美容院のカットモデルさん的な?」

「そうそう、そうです!」

「なるほど〜。やっと意味がわかった!」

そっか・・・モデルにも色々あるのか・・・。

お金を払うモデルも「モデル」・・・。

読者モデルが「読モ」といってもてはやされていた時期もあったなぁ。

その「モデル」もこの「モデル」も同じと言えば同じ・・・。

色んなモデル

まぁ、大手事務所には1000人以上モデルが所属していたり(実際お仕事しているのは一部で、それ以外の人は毎月会費やレッスン料を事務所に支払いながらひたすらチャンスを待つ)する訳だから、東京だし、ネイルサロンのカーテン越しに同業者が居てもなんの不思議もないなという私の「思い込み」からの勘違いでしたが、「〇〇モデル」って東京中にめちゃくちゃいるだろうなぁと思った出来事でした。

実際息子の通っていた地元の小学校でも、

「私もモデルなんです。」と話しかけてくれた綺麗なママがいらっしゃいました。

最近は小学生からおしゃれ女子は「モデルになりたい。」などと言ったりするようですが、意外と「モデル」にはすぐ「なれる」のかもしれません。

ただ、「モデル収入のみで生活していくのは本当に大変ですよ。」と、言いたい・・・経験上・・・。

まず、コンスタントにお仕事をいただくこと(オーディションに受かること)が大変で、やっとゲットしたお仕事も、自分がモデルになる前にイメージしていた、ファッショナブルな衣装ばかりではなく(ママ役の広告ならエプロン、とか顧客ニーズに合わせる必要があるため)、女性が多い職場独特の雰囲気もあるし(モデル同士の揉め事もありましたが私は女子校6年間で培ったスキルで切り抜けました)、ロケの時は5時起きで真冬に夏物を着て、鳥肌(関西ではでは「さぶいぼ」と言う)が映らないように、撮影前に肌を摩ったり・・・。

それでもこんなに長く続けてこれているのは、その大変さを上回るやりがいや楽しさがあるからです。

前にも書きましたが、何より「自分が必要とされ、どこかの誰かの役に立つ」ことに喜びを感じてきました。(「やりたい事とやれる事」参照)

ちなみに最近の私のモデルのお仕事は、「年齢肌にはこのお手入れを」とか

去年のお仕事(これはNGカットではありません^_^)

「シワになりにくい表情の作り方」とか「旅に行くのに楽チンな服装」みたいな感じでむしろ「年齢を感じさせる顔」を撮らせてくださいというNGカットがかなりの頻度でついてきます。

勿論お仕事をいただけるのは大変ありがたいし出来る限り、出版社やクライアント様の要求に応じていきたいと思ってはいるのですが、私もちっぽけなアラフィフ女性の一人、自分でも簡単に携帯でビューティ加工が出来てしまうこの時代にまざまざと現実を見せつけられるのはやはりキツイ(そしてそれが印刷物になったりする)・・・そろそろ限界かしら・・・。(何回言うねん)

若い頃も今も、きっとどんなお仕事もでしょうけど、「現実は厳しい」ということでしょうか。