ギャンブラーの人生観(旧cakes連載記事)

うちの夫はギャンブラーです。(勿論本業はしっかりやってます。)

これは本人もよくトーク番組なんかで話していますので、書いても大丈夫かと思いますが、パチンコと競馬をやります。

遊びで、麻雀もやります。

「パチンコ」は役者の仕事がまだそこまで忙しくない頃に私も付き合わせられて何度か一緒に行ったことがあります。

もう四半世紀前の話です。

その頃は、(夫曰く)今よりは「出ていて」(パチンコ玉が)長いこと座っていると、「出るから」と、なんの根拠もないまま横に座らされていました。

私はたばこの匂いが嫌だったし、自分はこの丸いリングのようなものを握って、少し傾けているだけで、(一体これは何の時間だろう)と、思いながら回り続ける数字や絵柄をボーッと眺めていました。

私も暇だったのですね。

飽きたら

「もう帰りたい。」と言っては夫に

「いや、今まで粘ったのにここで帰るのは一番もったいない。」と言われ、

納得いかないままじっと座って単調な銀の玉の動きを眺めていました。

結局、長―く座っていると、いつかは「出る時」が来るわけですが、それまでにつぎ込んだお札の枚数を考えると

「プラスマイナス同じくらい。」になっていることも多く、ますます、(この時間は何だったんだろうか)と思わざるを得ません。

そしてここからが信じられないのですが、「出終わって」、やっと終わったから帰ろうとしたら、夫が、

「いやいや、ここからやから。」とまたお札をパチンコ機に入れ始めるのです。

(ありえへん!この繰り返しやと絶対負けるやん。今日仮にプラスになったとして、その分を明日この機械に吸い込ませたら、エンドレスで負けに傾いていくやん!)と、よく揉めていました。

本気で「勝つ」気なら、「引き際」が最も重要で、「勝って帰る」ということをしないと、勝った分つぎ込んでいたら絶対に負けますよね。素人考えですが、そう思いました。(夫もプロではないけど)

多分みんなわかっているはず。

それなのになぜ非常事態宣言中に県を跨いでまで「行きたい」のか・・・。

それはきっと「楽しい」から。

そうなんです。

「その時間が楽しい。」のです。少なくとも夫はそうなんだと思います。

夫は多趣味で、「釣り」も好きですが、私は、一緒に行ってもやはり途中で飽きることが多いです。

私は、「パチンコ」と「釣り」は似てると思います。

「かかるかどうか(当たるかどうか)わからないものをじっと待つ。」

そこに「ワクワク」する。

私は釣りに行っても、ある程度釣れたら、「満足」「楽しかった」と、思い、あとはこのお魚達をどうやってお料理しようかな、誰を呼ぼうかな、などと「その次のこと」を考えています。

お魚パーティー

だけどギャンブラーは違います。

「次はもっと大きなお魚が釣れるかも。」と、時間ギリギリまで頑張ります。

良く言えば、「根気がある。」

もっと良く言えば、「夢がある。諦めない精神。」

ということは、「パチンコ」でも「もっと出る」と本気で思っているのですね。

まぁ、「ご自分のお稼ぎになったお金で楽しんでいる」なら、それで良い様な気もしますが・・・。

しかし「競馬」はどうでしょうか。

これは確かに大井競馬場のトゥインクルレースがデートに使われる様に、実際に走るサラブレッドのお馬さん達を見て、「盛り上がる」という一面はありますし、100円から馬券を買えたりするので、よくわかっていない女子でもあてずっぽうで万馬券を当てるという奇跡も時には起こります。

実は私も、100円が5万円になった経験があり、その時は嬉しくて盛り上がったけど、今思えば何にもわかっていなかったからこそ、

「この馬の名前が可愛い」とか「色が好き」とかいう理由でそんな「来るはずのない馬」を買ったんだと思います。

赤ペンを耳に挟んで競馬新聞と睨めっこしている「マジ」なおじさん達からしたら、「やったー!」などとはしゃいでる20代の私はどれだけ鬱陶しかったことだろうかと、今更ながら反省しております。

これもまた、ギャンブル好きの夫は「ずっとやる」のです!

例えば3レース目くらいから始めたとして、みんなが一番盛り上がるメインレースを終えて帰っていく中、その次の12レースまで「ずっと買い続ける」のです!

(ありえへん!そんなに「勝馬」をずっと当て続けられる訳ないやん!相手は動物。いくら騎手が名人でも、その馬が名馬でも、その時のコンディションやレースの流れ、「気分」で全くどうなるか分からへんねんから10回連続その予想が的中なんて絶対無理やん!)

しかも、1位と2位を当てるだけじゃなくて、「3連単」とかいう、1位から3位の順番が違ったらその3頭を選んでいても勝ちにならない(その代わり倍率は上がる)という、そんなんわかったら奇跡やん!というようなギャンブラー特有のややこしい買い方をするため、なかなか当たらないし、それを結局たくさん買うから当たっても投資額が大きくてプラスが少なくなるし・・・なんなん?(関西弁で、一体どういうことなの?という意味)

それでも夫はその買い方をやめないのです。

ガチガチの予想通りの馬がきて、1000円が1200円になっても私は1000円が0円になるよりは余程嬉しいのですが、夫は

「そんなん取ってもしゃあない。」と鼻で笑います。なんなん?2回目。

だから結局は「ワクワク」を買っているのですね。

ある投資本を読んだら「競馬はどんなにうまく買っても、長期的に見れば最高0.75の利益にしかならない。」と書いてありました。

後の0.25はJRAの運営資金として「寄付」しているということです。

大人になると、「ワクワク」することってやっぱりどうしても減ってしまう様に思うので、それはもう「ワクワク」を買ってると考えるしかないのかなと、毎月きちんとJRAに一定金額「寄付」している夫の通帳を見る度にイラッとしつつも、諦めてしまう私です。

もう揉めるのもめんどくさいし。

「麻雀」は私も夫もなぜか「親から小学校4年生で家族麻雀を習った」経歴があり、出会った頃には二人とも「出来て」、勿論お互いの両親も「出来て」、子供が生まれるまではお正月など、お互いの家に行った際には「喋ることもそんなにないし、麻雀でも」という感じで、トランプみたいなノリでやっていました。

頭も使うし、会話も弾むし、私は「これは覚えていて良かった」と思いました。

なぜなら、トランプよりは遥かに面白いし、頭も指先も使うから、両親のボケ防止にはもってこいだし、何より「大人になってから覚える」のがとても大変そうだからです。

覚えることがたくさんありすぎて、大人の硬い頭では嫌になってしまいそうな・・・。

でもこれ、意外と役に立つ様で。

私は家族としかやったことがありませんが、男子は特に大学時代やら社会人になってからも「出来る」というだけで重宝されるということです。

そして、ずっとゲームばっかりしているよりはいいだろうと、息子にも小4から仕込んでしまいました。

今は中2ですが普通に打てます。

残念ながらうちは一人っ子なので(夫も私も兄弟がいた)後一人メンバーがいないと出来ませんが、言い方を変えれば、あと一人呼べば出来るのです。

「国士無双」であがる息子

小4から子供に麻雀を教えるなんて、レアケースかもしれませんが、レアケース同士が結婚したからなんかもうそれは自然の流れでした。

ちなみに我が家の一番の「ギャンブル」は20年前、「お金がないのに家を買ったこと」です。

今まで貯めてきた二人の貯金を全部合わせても、頭金にはギリギリで「家を買ったら家具も買えない」状況で、購入を決めました。

なぜなら夫が「ギャンブラー」だから。

「ワクワク」を求めて、地下スタジオ付きの家がどうしても欲しかったのです。

「小劇場出身の役者が頑張れば東京でこんな家に住める」という「夢」を後輩達に見せたかったのかなとも思います。

(実際たくさん後輩達を家に呼びましたし、地下スタジオは稽古場として今でもお安くお貸ししています。)

私もその時はなぜか「なんとかなるやろう」と大して不安ではなかったです。

しばらくは貧相な家具しかなくて、家にそぐわないチグハグな生活をしていましたが、なんか楽しかったし・・・そう思う私もちょっとギャンブラーの気があるのかも知れませんね。

地下スタジオ 私のヨガ教室としても利用しています

そもそもなんの保証もない「役者」と「モデル」という仕事を若い頃にそれぞれ選択しているだけでもかなりのギャンブラー夫婦だと私は思います。

人生は少しくらい冒険した方が「ワクワク」が増えて楽しいし、このスタンスはきっとこのまま続くであろうと思われます。

が、息子が「役者」か「モデル」になりたいと言ったら「絶対反対する」という意見は一致している私達です。

・・・親心ってやつですかね。