言いそこ間違う人々(旧cakes連載記事)

題名、おかしいですね・・・「言い間違う」と「言い損なう」が合体してしまっています。

でもこれ私、間違ってるなぁと思いつつ、結構使ってしまう言葉です。

「何それ、いいそこまちがってるやん!」とか。

なんか「言い間違い」でもなく「言い損ない」でもないどんくさい感じがあらわされているような気がして・・・。

同じ感じで行くと、「嗅ぐ」(かぐ)と「臭う」(におう)を合体させて、「におぐ」と、言ったりもします。

これも正しくないとわかっているのですが、割と使います。

「何?ちょっと、におがんといてよ!」とか「何をそんなににおいでんの?」とか。(猫に対して)

なんか、可愛いというか、「においをかぐ」という動作の失礼さが弱まる気がします。

ちなみにこの表現は面白いと思ったのか、夫がとある脚本を書く時にに採用していました。

こんな感じで色々「言いそこ間違う」人っていませんか?

私の場合は上記のようにわかっていて「わざと」そっちを使っている場合が多いのですが、友人達の中には

常に「本気」で間違えている強者もいます。

このエッセイにもよく登場する仲良しの後輩と、この前久しぶりにランチをした時、当然出てくるこの話題・・・。

「もーほんま大変ですよねー、コロナうずの中でー。」

「コロナか(禍)、な。」

「え?うそやん!あれ、コロナうずって読むんじゃないんですか?」

「ちゃうよ!アナウンサーがコロナうずって言うてんの聞いたことないやろ?」

「・・・ほんまや!めっちゃずっとコロナうずって言ってましたー!

だって誰もなんも言わなかったですよ。スタッフとかお客さんとか。(美容院店長の彼女)」

「あー、まぁそれは、間違ってるなぁとは思ってはったやろけど、正すとR(後輩の名前)が初歩的な間違いすぎて恥ずかしくなると思ってみんなが言えへんかったか、もうめんどくさかったかやな。」

「えーーーーー!うわ!なんや!みんな教えてくれたらええのにー。」

「まぁRはそもそもそんなんが多いからみんな慣れてんのんちゃう?」

「えーーーーー!そう言えば、速攻突っ込むの、陽子さんくらいですわ。」

「せやろ。私のは愛情やから。」

「めっちゃ早いですもんね。」

「そ、あと、間違いを許さへんから。」

「うける〜!」

というような会話がありました。

彼女は「雨水」(あまみず)を「あめみず」、「大病」(大病)を「だいびょう」、赤ワインにフルーツをたくさん入れて作るお酒「サングリア」を「シャングリラ」(理想郷・桃源郷)と言ったりします。

だいぶ前のことですが、「サングリア」をレストランで間違えて、

「シャングリラください。」

と注文した時は、ピエール瀧さんがコカイン使用の疑いで逮捕された時期で、私は「シャングリラ」と言うと彼が所属していた電気グルーヴというバンドのヒット曲を連想してしまう世代ですので、

「ちょっと!今その間違い方はあかんやろ!」

と無駄に慌てて大きく制してしまいました。

女子に人気のサングリア

多分Rも注文を取りに来た若い店員さんもあの逮捕された朝ドラや大河ドラマにも出演していた俳優のおじさんがバンドをやっていたことすら知らなかったと思いますが・・・。

この時も彼女は

「え!?今までずっとシャングリラくださいって言ってたのに誰も教えてくれへんかった!」

と言っていましたが、多分大阪でそれをやったら同席の人か、もしかしたら店員さんに即効

「サングリアやね!」

と突っ込まれると思うので、「土地柄」もあるのかなと思います。

彼女も私と同じで自分の生まれ育った関西の地よりも「東京砂漠」(言い方が昭和)での暮らしが長くなってきているなかで、

間違いを許さない私に出会うまでは、「言いそこ間違い」をそのまま放置され続けた結果、こんな仕上がりになってしまったのかと・・・。

やっぱ冷たいんちゃう?東京の人らは・・・

言うても地方出身者の集まりのはずやけどなぁ・・・などと全然違う方向に思考が進んでいくなかで、思い出した「方言問題」。

前にも書きましたが、私が上京してきた頃はまだ関西弁を全国ネットの番組で堂々と喋るのは芸人さんくらいという時代でしたので、「モデルになり立て」の私もマネージャーさんから「出来るだけ標準語を早くマスターするように。」と言われていました。

若かりしモデル時代(多分「JJ」と「RAY」)

今振り返ると

「ちょっと失礼やったんちゃう?なんで関西弁やと「モデルのイメージが崩れるから」とか言われなあかんかったん?」

とも思いますが、当時は

「ごもっともです。」

となんの疑いもなく、ご指示に従っていました。

これは今も昔も同じでしょうが、「関西圏の人が標準語を覚える」のは「関東圏の人が関西弁を覚える」よりもはるかに簡単です。

なぜならテレビのニュース番組はもちろん、ドラマなどもほぼ標準語で作られているため幼い頃から「ヒアリング」は自然と身に付いていて、発音を真似るのはその蓄積された記憶の引き出しから取り出すだけなので容易いことなのです。

恥ずかしくさえなければ・・・

そう、関西人が急に標準語を喋るのは「むずいというよりも恥ずい」のです。

なんか「イキってる」(かっこつけてる)みたいで・・・。

私はその辺は結構大丈夫なタイプだったので、上京後ひと月も経った頃(約30年前)には「完璧な標準語」を喋っているつもりでした(自分的には)。

が、東京と大阪で略し方が違う店舗があることには気がついていませんでした。

そお、「マクドナルド」です。

東京では「マック」ですが関西では「マクド」です。

私はある日オーディションに向かう道順に迷っていて、(当時モデルオーディションは基本一人で事務所から送られたFAXの地図を片手に行くのですが、私はどうしようもない方向音痴でよく先方に公衆電話から電話をかけて道を聞いていました。携帯電話もない時代でした。)

「イメージを損なわないように」完璧な標準語で、

「すみません。スペースの堀本ですが、道に迷ってしまいまして・・・。」

「はーい、今どこですか?」

「はい、マクドのある交差点です。」

「・・・マクド?」

「はい、マクドがあります。」

「・・・あ、マックね!OK!じゃあそこを右折して・・・。」

と、それについては何も言わず(むしろ言って欲しかった・・・)親切に説明をしてもらいましたが、私は上の空で、

「えーーーーー!マクドナルドって、マックなん?」

という衝撃を受けていました。

マックといえば当時流行り始めた化粧品ブランド「M・A・C」のイメージしかなかった私は、先輩モデルさんに「表参道のマックの上に可愛い雑貨やさんがあるわよ。」と聞いて行ってみたものの、「M・A・C」の上にそんなお店はなく、見つけられなかったことを思い出していたのです。

「うわーーー、あの時のマックもこっちやったんかーーー。そら見つけられへんわ、雑貨屋さん。それよりもさっきの電話でマクドを標準語っぽく発音してしまった(「ク」にアクセントを付けるではなく「マ」に付けたこと)が何より恥ずかしい。」

などと考えて一人で赤面しながらとぼとぼとオーディション会場を目指した苦い思い出(?!)があります。

その後覚えたのは大阪で言う「さぶいぼ」は東京では「鳥肌」、

物を「ほる」は「捨てる」、

蚊に「かまれる」は「刺される」などです。

そういえば大分出身の友人は「カレー(ライス)」のことを「カレー」の「カ」にアクセントをつけて言うため、私はどうしてもお魚の「かれい」を想像してしまい

「今日はカレーにするけん。」と彼女が言うとつい

「煮付け?」と聞いてしまいます。

何度このやりとりをしたことか。

でも最近私がよく使う「加齢」のイントネーションは全国共通な気がする・・・。

わかりやすくて良い。