育犬ノイローゼ(旧cakes連載記事)

結婚して2 年が過ぎた頃、やっと新生活も落ち着いてきたからでしょうか、夫が「犬を飼いたい」と言い出しました。

「え!? 猫しか飼ったことないから、私飼い方わからへんわ」。

「大丈夫! 僕んちはずっと犬を飼ってたから。任せて!」

ほんまかなあ・・・任せてと言っても夫は忙しいんやから結局世話するんは私になるような・・・。

とりあえず、どんなものか見に行ってみようということで、当時住んでいたマンション近くのペットショップへ。

居ました居ました! 子犬達!!

「赤ちゃんは誰かにお世話をしてもらわないと生きていけないから、人間も動物もみーんな、可愛らしく出来ている」と聞いたことがあります。

ほんとにその通り! どの子も(もう子って言ってるし)めちゃくちゃ愛らしい❤

はっきり言って猫派の私でしたが、一気に「わわわわわー❤❤❤❤❤!」と犬派に転向し、なかでもスヌーピーのモデルになったというビーグル犬の赤ちゃんに釘付けになりました。

他の柴犬や、当時大ブームとなっていた、ミニチュアダックスフンドと一緒に、大きなゲージのなかで遊んでいる赤ちゃんビーグル2匹!

そう、2匹、居たのです。

「この子達は、5匹で生まれたうちの2匹なんですよー。」と店員さん。ということは、兄弟(正確には姉妹)、生まれた時からずっと一緒にいるのですねー。

ゲージのなかでも2匹は常にくっついて遊んでいます。

まだ20 代だった乙女な私、
「こんなの、引き離せるわけがないわ!(なぜか急に標準語)2匹とも、連れて帰ります!!」

・・・・・・。今思うと、犬を飼うこと(生き物と暮らすこと)の責任の重大さ、お世話の大変さなど何もわかっていませんでした・・・アホやん・・・。

仲良しの2匹

そして始まる2匹の子犬との壮絶な格闘、育犬ノイローゼの日々・・・。
まず、ビーグルという犬種。

見た目の可愛さとは裏腹に、非常にやんちゃで大食漢のため、どちらかと言うと、上級者向けの犬種なのです。

そして多頭飼いの場合、それぞれの犬種の大きさや性格などを考えて、まずは1匹飼って、その子が十分におうちに慣れてから(躾が出来てから)、次を飼うという常識も何も知らず・・・。

お顔が可愛い❤とか、引き離せないわ❤などと乙女チック(表現が昭和)になって一気に連れて帰ったりするものでは決してないのです。

トイレの躾がなかなか入らないのは当然のこと(粗相があってもどちらがしたかわからず怒れない)、留守中大き目のゲージに2匹を入れておいても帰って来たら、ゲージを2匹で協力して倒壊し(こういう時だけ賢い)、飛び出してきているのは当たり前・・・。

2匹を連れてお引越し

これを機にペットOK の賃貸テラスハウスへ引っ越しまでしていましたが、あっという間に新築物件の壁に穴が掘られました。

聞けば元々兎狩りの狩猟犬らしく・・・そんなとこに兎はおらんよ・・・。

自分へのご褒美にと頑張って買った当時流行のパシュミナストール(めっちゃ高かったやつ)も、両サイドから引っ張り合いっこされ、穴だらけに・・・綱引きやないんやから・・・。

筆ペンで遊び、2匹とも顔が墨だらけになっていたこともありました。あれ? こんなブチ柄やったっけ?!・・・言うてる場合か!

顔を拭いているうちに本当に黒毛の部分も必死にゴシゴシこすっていました。

外出先から家路に着くのが恐怖な日々・・・今日はどんなことになっているかなあ。

かと言って現実逃避する訳にもいかず、案の定夫はほぼ家に居ないので、私は仕事や用事が終わると重たい足を引きずって急いで帰っていました。

いや、もちろん可愛い面もたくさんありましたよ。2匹いるからこその、愛らしさ、楽しさもありましたが・・・。

元気いっぱいの2匹

躾の学校にも連れて行きましたが、スタッフさんが楽しみにしていた、あん肝鍋の「肝」をちょっと目を離した隙にテーブルに上って全部食べてしまいましたと苦情を言われ、ひたすら謝罪する羽目に。

プロの方々でも手に負えない悪さ!

新居に買った3本脚のおしゃれテーブルはどんどん脚を齧られて、ついに2本脚になり傾きました。もはやホラー。

1 年半くらい経過して、トイレや散歩の躾はなんとか出来たものの、いたずらはまだまだ収まらず、元気一杯の2匹を車に乗せて、主人の実家へ里帰りした際、優しいご両親が「うちもちょうど犬を飼いたいと思っていたから、2匹は大変みたいやし、1匹置いていったらどお?」と提案して下さいました。

あんなに乙女的な発想で2匹を連れ帰った私でしたが、悩んだ挙句、ここに貰ってもらったら間違いなく幸せだし、時々会わせてあげることもできるし、と、何とも人間らしい身勝手な言い訳で自分を納得させて、夫ともよく話し合い、「よろしくお願いします」と、涙の別れをしました。
【– 見出し h2 –】愚かだった自分を大反省しながら1匹を連れて家路につきました。
それから2匹はそれぞれの家で幸せに長生きし、うちの子は平均寿命12 年のビーグル犬にしては珍しく、怪我も病気もせず18 歳まで生きました。

1匹になってもいたずらは健在でしたが、やはり相乗効果がないことと、段々大人になり、落ち着いてきました。

夫によく懐き、人間の子供が生まれてからは、夜は私が息子と、夫が犬と寝ました。

最期の1週間は食事は全く出来なくなりましたが、寝たきりにはならず、何とか歩いて家族の元へ行き、寄り添っていました。

その日、夫は仕事で地方へ行っていて、私は息子を小学校へ送り出した後、お尻を綺麗にしてあげてから、「ちょっと待っててね。」と、地下スタジオへヨガのレッスンのため、降りていき、90 分のクラス指導を終えて、ドキドキしながらリビングへ上がって行きました。

今朝はお水も飲めなくなっていたので、とても心配だったのです。

そっと名前を呼ぶと、フラフラと私の元へやって来てくれたので、ホッと胸を撫で下ろし、抱っこしてずっと話しかけながら頭を撫でていました。

30 分くらいした頃でしょうか、驚くほど大きな声でワンワンと吠えてから、静かに、眠るように私の腕の中で天国へ逝きました。

最後に夫を呼んでいたのかなと思うと切なかったですが、飼い犬が亡くなる前に大きく吠えることはよくあることだそうです。

さよならを言ってくれていたのかな。
お教室が終わるまで待っててくれて、ありがとう。

18年一緒にいた子

亡くなって2 年が経ちました。

犬はもう飼えないなあと思っていた私ですが、夫と息子は毎日のように「絶対自分たちが世話をするから飼いたい。」と言われ、「いやもう、絶対嘘やし、最期に見送るのはきっとまた私やし。」と、騙し騙し引き延ばしてきました。が、先日ついに、主人が下見をしていたというペットショップに連れて行かれました。

そしてまた、一気に乙女に(20 年ぶりに)なってしまいました。

「こんな小さい猫、連れて帰ってあげなくちゃ❤」

そう、今我が家には可愛い子猫が居ます!

でも今回はきちんとこの猫の性格、飼う時の注意点などしつこいくらい詳しく聞いて、一回帰って家族会議をし、トイレなどの準備を万全に整えてから、迎えに行きました。

猫はトイレも最初から猫砂でキチンと出来るし、ご飯も欲しい分だけ食べて、残したりします。本当に申し訳ないくらい、お世話が楽です。

息子に抱っこされる新しい家族

ペットショップの方には「ビーグルちゃんを飼っていたんだったら、どんな犬でも猫でも超楽に感じると思いますよー。」と言われました。

あ、やっぱりそうだったんですね、20 年前に教えて欲しかったです・・・。

おとなしい子猫のお世話をしながら(結局ほぼ私が)あの育犬ノイローゼの日々を懐かしく思い出す今日この頃です。