洒落にならない方向音痴(旧cakes連載記事)

私は方向音痴です。
という女子は沢山いらっしゃるかも知れませんが、私の場合、「ヤバいレベル」です。

例えばスタジオなどでトイレの場所が少し離れていたりすると、元の仕事場に戻れなくなる事もしばしば。

特にテレビ局は、小さい楽屋が沢山並んでいて迷路のようです。

一緒にトイレまでついて来てくれたマネージャーさんが先に戻られていて、出てきたらいなくて、本気で迷って(このままでは収録に間に合わなくなるのではないか)と思う程無駄にウロウロして冷や汗をかいた事もあります。

もう47歳なのに、トイレから楽屋に戻れないなんて、全然かわいくもなく人に聞くのも恥ずかしいし、聞かれた人も、「人の楽屋の場所なんか知らんわ。」となるのが当たり前で、あの時は本当に自分の方向音痴振りが嫌になりました。

モデルオーデションを受けに行ってもよく(本当にしょっちゅう)控え室や出口が分からなくなり、早く帰りたいのに帰れない状況になるのです。

あまりに多いので自分で分析してみた結果、入口と出口が同じだった場合(だいたい同じですが)右から来て入ると出る時も右に出てしまう傾向にあり、結果反対方向に歩いて行っていることになってしまうので、自分が思っているのと逆に歩いてみると合うのかしら、と思ったりもします。

これは母としてもかなり恥ずかしい思いをしていて、
息子の通っていた小学校の授業参観や保護者会に何度行っても我が子の教室へ向かう最短距離が分からず、これまた全く関係ないところを歩いていたら、同じクラスのお母さんに「どちらへご用事ですか?」と聞かれる始末。

やっと教室への行き方を覚えた頃には学年が上がり、また1からになったり、「今日の参観は音楽室です。」とか言われたりします。

後半になってくるとそんな私を見兼ねたお母さんが「出口はこっちですよ。」と誘導して下さるようになりました。

34歳で出産しているのでお母さん同士の中で特に若い方でもないのに、本当に恥ずかしい。

勿論、知ってますよ! 誰でも行きたい場所に誘導してくれる便利なGoogleMap!!
外ではフル活用していますが、建物のなかでは使えないのが私にとっては難アリです。

もう「目的地」には到着しているのですから、当たり前ですよね。

誰か、建物の中で「楽屋1」とか「音楽室」とかを「目的地」に設定出来るアプリを開発してくれないかなぁ…と思いますが、きっとニーズがないから出来ないでしょうね。

また昔話で恐縮ですが、私がモデルに成り立ての頃(約30年前)は携帯電話もない時代ですから、まずは一人暮らしのアパートにFAXを買って、そこにオーディションやお仕事の地図が送られてきました。

当時は感熱紙といって、沢山送信されてくると1枚ずつ切れたりはしないので延々と繋がって出て来て、くるくると丸まってお茶とか溢したら字が激しく滲んで読めなくなる薄〜い用紙でした。

それをハサミでカットして何枚も丸まらないように伸ばしてクリアファイルに入れて、まだ慣れない東京砂漠を一人であちこち迷いながら、1日4本とかオーディションをこなしていた日々が懐かしいです。

絶対に他のモデルの1.5倍は(無駄に)歩いていたと思います。

私の凄い(ダメな)ところは、「1回迷った場所は何回行っても迷う」ところです。

「ここは迷う」という場所は「絶対に迷う」ので、より早めに家を出る必要があります。

私の鬼門は「新宿」。
上京して1年くらい経った頃でしょうか。

同じ事務所の先輩モデルさんが「ご飯食べに行こう!」と誘って下さり、新宿駅南口で待ち合わせをしました。

南口は西口や東口に比べて比較的(あくまで比較的)人が少なく、すぐ会えるかと思いましたが、一向に会えず、留守番電話を聞きに何度も公衆電話に行きました。

当時は携帯電話は愚かポケベルもなく、外出先での連絡の取り合い方といえば、家の留守番電話に録音された内容を公衆電話から暗証番号を入れて聞くという方法しかなかったのです。

お互い一人暮らしの為、中に入ってくれる家族もなく…せめて「改札出て右のほう」とかくらいはきちんと決めておけばよかったのに、「南口」としか決めていなかったので、右寄りと左寄りに居るだけで、間にわんさか人が行き来して行く新宿では会えないのです。

さすがコンクリートジャングル東京。

しかも多分お互いに家の留守電を聞くためにちょいちょい「持ち場」を離れるため、すれ違っていたのでしょう。

1時間近く会えなかったので「もう今日は諦めて帰ります。」と先輩の留守電に入れて帰ろうとしたその時、バッタリ!会えたのです。

待ち合わせをして会ったのだから、当たり前のことなのに、

「わー!よかったー!もう一生会えないかと思ったー!!」

と、お互いまるで奇跡が起こったような喜びようでした。

今ではLINEであっという間にお互いの居場所を(地図に印をつけて送ったりして)教え合えるので嘘みたいですよね。

この新宿鬼門問題は最近も2回ありました。
1回目はオーディションでとあるビルを指定され、家から電車で向かっっていた時です。

(新宿かぁ。嫌な予感するなぁ。)と思いながら…。

京王線の新宿駅に到着し、外に出ようと得意のGoogleMapを確認したら、行く方向は西口方面なのに経路が東口方向を示しています。

(なんで?西口から出た方が近いやん。)と方向音痴の分際で思った私は、生意気にもスマホを無視して標識の「西口」を頼りに広い新宿駅構内をどんどんなぜか自信満々で進みました。

そしてやっと「西口改札」に到着しいざ出ようといざSuicaをかざすと、「ピンコン!」と恥ずかしい音が大きく鳴り、改札の小さな扉が閉まり、私を通してくれません。(なんで?!)とよく見るとそれはJRの改札機!(え、マジで!?出られへんの?)と疑いの眼差しを改札機にいくら向けてもドアは開きません。

止むを得ず、納得いかない口調で駅員さんに、

「あのーここまでは京王線で来たんですけど、これで出られないんですか?」とスマホのSuica画面を見せて聞くと、

「あー、それでしたら京王線の改札からしか出られませんね。」と、至極当然のお返事。

(この場合SuicaかPASMOかは関係ない)

「えー!Suicaやのに?!じゃあ京王線の西口改札はどこですか?」と聞くと、

「京王線はねー、だいぶ戻って京王線の東口改札から出て、西口方面に戻ってくる感じなんです。」

「えー!京王線の西口改札はないんでしょうか?!」

「あ、はい。あちらへ。」と、もう明らかに(めんどくさい田舎者が来たな)という態度。

えーーーーー!もう30年近く東京に住んでる私にその態度!?と思いましたが、確実に間違っているのは私だし、刻一刻と時は過ぎて行きます。

(うわー、そんなことある?!遅れるやん!私新宿駅構内、どんだけ歩くねん!)

と急に焦ると大量発汗してしまうお年頃なのに、落ち着いている暇はなく、早足で、京王線東口に戻りました。

(そういうことだったのね、GoogleMap!方向音痴なくせにGoogleではなく自分を信じた私がバカだった!過信した!)

結局クラアント様を10分以上お待たせする結果になり、しかも冬なのに汗だくで到着。

もう2度と自分を信じまい(地図に関して)と、心に決めた私でした。

2回目は前回書いたパスポート申請に新宿駅西口方面に行った時のこと。
今度こそGoogleMapに従い、指示通りにスマホと睨めっこしながら都庁前に到着した私。

(いやー、いつ見てもやっぱりこの新宿のビル群は圧感だわ〜)とまたうっかり最近上京してきました感を出しながら上を見上げ、都庁の写真を撮る私。

2020年2月の新宿都庁

(あかんあかん、目を離したらあかん!)と、ビル風に煽られながら、視線をGoogleMapに戻します。

すると、自分のMap内で現在地を示す青い点の位置が、高層ビルの影響でしょうか、なかなか定まりません。

(もー、これだけが頼りやのにー。自分で考えて余計な動きをしたらろくな事がないからな。)

と、先日学んだばかりの自分に対する見解を早速使う私ですが、肝心のGoogleMap様がお迷いになっていたらもう、何を信じたら良いのかわかりません。

またちょっと焦り出し、ふと顔を上げると目の前に「パスポート申請」と書いたプレートが!!

突然目の前に現れた(ように見えた)案内標識

(うわ!着いてるやん!びっくりするわ!今日はスマホに頼りすぎて周りが見えなくなっていたわ、私。)

とまたもや反省。

本当に困りものの私の方向音痴は、もう一生治らないのでしょうか…。

もはや持病レベル、出来るだけ人にご迷惑をお掛けしないように生きていきたいと思ってはいるのですが…自信はありません。ごめんなさい。(きっとまたやらかしそうなので先に謝っておきます。誰にか分からんけど。)